1月の相談【通勤手当の不正受給の対応は?】
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社 長) |
通勤手当支給のための申請書類の住所と、他の書類に記載されている住所が異なることが判明した社員がいます。通勤手当の不正受給も考えられます。どのように対応したらいいでしょうか。
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社労士) |
まずは不正受給の有無、時期、不正受給額などを確認するために、社員からの話を聞き調査をします。
具体的には、提出されている書類と他の書類上の住所との齟齬や実際の通勤経路について説明を求めます。場合によっては定期券等のコピーや領収書の提出を求めたりします。
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社 長) |
当社としては、「不正受給の意図があったか?」により、処分を考えています。
過払い分があれば返還してもらう予定です。
返還請求は賃金の支払いと同じ2年ですか。
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社労士) |
単に住所変更の手続きを失念していた場合も考えられますし、その場合には過払い分を分割などで返済してもらえばいいと思います。
返還請求については、労基法上の賃金支払い請求権は2年(退職金は5年)ですが、民法上の不当利得返還請求権に基づいて10年になると思います。
不正受給と言うか悪意がある場合が問題になってくると思いますが、その場合には返済の他に懲戒処分も検討すべきです。本来払わなくてもよい、通勤手当を支払っていたのですから。
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社 長) |
就業規則の懲戒規定にある「故意または重大なる過失により会社に損害を与えたとき」に該当する場合があるということですか。
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社労士) |
そうですね。過去の判例もあるので参考にしながら、処分を下した方がいいです。
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社 長) |
そもそも通勤に要する費用は、会社が負担すべきなのでしょうか。
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社労士) |
一般的には社員の福利厚生の一環として、費用の一部を賃金として支給している会社が多いようです。御社の場合には、就業規則において支給が定められていますので、通勤手当は労基法上の賃金に該当し、支払う必要があります。
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社 長) |
取り決めがなければ、社員の負担ですか。
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社労士) |
民法485条に、「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする」と規定しています。(「弁済の費用」)
社員が通勤のために自宅と会社との往復に要する費用はこの弁済に当たるため、通勤に要する費用は債務者である社員が負担することになります。
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